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「白い船に乗って」 

<準備物><概略><第一幕〜第四幕・完成>



賀本俊教(TOSS淡路キツツキ)

1998年8月、「第12回法則化兵庫合宿」が淡路島で行われた。そこで酒井先生から、直接ご指導を受けた。それを10月に実践したものである。
まず茶ボール紙を準備しよう。これは「白い船」を美しく描くための秘密兵器だ。「白」を引き出す方法を体得するための入門シナリオである。   作品集へ



<準備物>

@ 八つ切り画用紙を半分にしたもの
A サインペン
B 四つ切り茶ボール紙
C 絵の具
D 太筆・小筆・面相筆



<シナリオの概略>

<第一幕(45分)> 「かたつむりの線」の練習/お話を聞いて、「へさき」と「とも」を描く

<第二幕(90分)> 自分の船を描き、彩色する

<第三幕(90分)> 登場人物を描き、彩色する

<第四幕(90分)> 波、空、魚を彩色する

<完成> Q&A−酒井臣吾先生のコメント−



<第一幕(45分)> 「かたつむりの線」の練習/お話を聞いて、自分の船を描く   ページTOPへ  作品集へ

まず、「かたつむりの線」を練習した。一人ひとりに、八つ切り画用紙を半分にしたものを配った。次の指示をした。

ものさしを出して、0と15pのところに・をつけなさい。

黒板に次のように例示した。


次の指示をした。

サインペンを出しなさい。先生が「ようい」と言ったら、左の「・」にペンの先をつけます。「スタート」と言ったら、右の「・」に向かってスタートします。右の「・」についたら、「できました」と言いなさい。

「ようい(普通の声)、スタート(小さい声)」で、全員がスタートした。


C できました。

T 2秒。

C できました。

T 3秒。

  …

ストップウォッチでタイムを計っていったのである。一番遅い子でも、「6秒」だった。次の説明、指示をした。

一番遅い子で6秒でした。みなさん「失格」です。「かたつむりの線」になっていません。15pを30秒で描くのが「かたつむりの線」なのです。もう一度、0と15pのところに「・」をつけなさい。(できたのを確認してから)「ようい、スタート」


C できました。

T 20秒。

C できました。

T 23秒。

C できました。

T 30秒。


2名以外の子が、30秒で描けた。

もう一度、同じことをやった。なんと全員が、30秒で描けるようになったのである。画用紙の下の空いているところに、赤鉛筆で、

かたつむりの線合格

と全員に書かせた。
次に、「今日は、白い船を描きます」と言って、『楽しい絵画教室』第10号(明治図書)P52のお話を読み聞かせた。

 これは、本当に楽しい夢だ。君がもしすばらしい船を手に入れたとしよう。大きな白い船だ。形は全く君の好きな形でいい。その船の名前は、しょう太君なら「しょう太丸」としよう。真由美さんのは「まゆみ丸」だ。みな自分の名前をつけよう。
 一流の船長さんと一流の航海士さんを雇うことにしよう。海に出て嵐に会っても、これなら大丈夫だからね。それに一流のコックさんも雇うんだ。何しろ船の旅はおいしい料理が一番だからね。

 夏休みになった。さあいよいよ出発だ。君は一緒に連れていきたい人を五人から十人ほど選ぶんだ。お父さん、お母さん、大好きなおじさん、友達もいいだろう。一緒に旅をして楽しいと思われる人なら誰でもいい。できるだけたくさんいると楽しいね。
 え? 犬も連れていっていいかって? もちろんだ。犬でも猫でも、小鳥でもすきなものを持っていこう。何しろ大きな船なんだから。
 それに、一番大切なのは、釣り道具を持っていくことだ。何しろこれから行く南の海には、魚がウジャウジャいるんだ。いくらでも釣りが楽しめるんだ。

 船は一週間の長旅を終えて、目的の南の海に着いた。青い空、風も静かで絶好の釣り日和だ。船長さんは大声で叫んだ。「さあ、いくらでも魚を釣っていいぞ!」コックさんも叫んだ。「釣れた魚の料理は、ぼくにまかせな!」
 君たちは、ワクワクしながら釣り道具を取り出した。そして、いよいよ魚釣り大会が始まった。
 それからどうなったか。こんなになると楽しいなあ−と思うことを絵に描いてみよう。


C ローマ字で名前を書いてもいいの。

C おばあちゃんも連れていってあげよう。


子どもたちは、イメージを膨らませていた。

読み聞かせたあと、茶ボール紙(四つ切り大。同掲著では、33p×47pぐらいが丁度よいとされている)を配った。

まずは、船の「へさき」と「とも」の角の部分を描かせた。分かりにくそうだったので、「動物の形でもいいし、マンガのキャラクターでもいいよ」と言いながら、私が1つ黒板に例として描いた。

「かたつむりの線で、ようい、スタート」

私のまねをする子、動物を描いている子など、一人ひとりちがっていた。

「いいね」「おもしろいね」と言いながら机間指導していった。



<第二幕(90分)> 自分の船を描き、彩色する   ページTOPへ  作品集へ

「へさき」と「とも」が全員できあがったので、かたつむりの線でつながせた。

まっすぐつないではいけません。釣りをするところ、階段、海を見る小窓、いっぱいつけながら進むんだよ。


C ようし、いっぱいつけるぞ。

C 釣りがしやすいように、座るところも作ろう。


子どもたちは、やりたくてしかたないようだった。

かたつむりの線で、ようい、スタート。

次に船体である。次のように指示した。

これも、まっすぐ海につないではいけません。面白い線でつなげよう。船体には、自分の名前も入れます。あとは、キャラクター、イカリ、窓、模様、何をつけてもいいよ。


C 海賊マークを付けよう。

C 救命ボートも乗せようかな。


イメージがどんどん膨らんでいくようだった。

かたつむりの線で、ようい、スタート。


とても楽しい船が、次々と生まれていった。続けて、彩色である。

まずは、パレットに「白」をたっぷり出させた。講座にて、酒井臣吾先生からご指導いただいた通り「たっぷり」出させた。白にほんの少しだけ、赤や黄や青を混ぜさせ、変化をつけさせた。

いつもは、「マヨネーズよりも薄く、ジュースよりも濃く」だけど、今日は、「マヨネーズに近いくらい」にしよう。

「ていねいに塗れてるね」「変化をつけるといいね」と言いながら机間指導していった。



<第三幕(90分)> 登場人物を描き、彩色する   ページTOPへ  作品集へ

ここでは、第一番に「自分」を登場させた。

一番大きな魚を釣ろう!

と言って、描かせた。

あとは、次々に描かせた。

お父さん、お母さん、友達、犬、…。

※実践を終えてから振り返ってみると、ここが失敗であった。「オートメーション描き」になってしまったのである。ほとんどの人物が、「前向き」「動きがない」「固い」「お人形」。マンガ的な人物になってしまったのだ。 後日、酒井臣吾先生より、お手紙による指導手順が届いた。

次に、登場人物を彩色させた。次の2つを注意した。

1 小筆を使う。
2 サインペンの線を踏まない。

人物を小さく描いた子は、かなり難しそうだった。



<第四幕(90分)> 波、空、魚を彩色する   ページTOPへ  作品集へ

まず、「波」から塗らせた。ここでは、次の2つを注意した。

1 大筆を使う。
2 全部塗りつぶさず、変化をつける。

太陽の光が波に写っているような色を塗っている子もいた。

次に、「空」を塗らせた。ここでは、次の2つを注意した。

1 たっぷりと色を作る。
2 海よりも水を多めにする。


C 夕焼け色にしていいの?

T いいよ。


最後に、「魚」を塗らせた。

どんな色でもいいよ。

とても楽しそうに仕上げていた。

できた子から、黒板に磁石で貼り付けていった。全員完成してから、「酒井式鑑賞指導」をした。

(黒板一段目、8名の絵から)この中で一番好きな絵を選びなさい。 

次々に挙手させていった。

なぜそれが好きなのか言える人は手を挙げなさい。


C キャラクターがかわいいからです。

C 夕焼けの色がきれいだからです。

C 船の形が面白いからです。


次々に意見が出された。どの子の意見にも「おお、天才!」とほめてあげた。挙手されなかった絵については、

先生は、この絵のいいところを5つも見つけたよ。誰か分かる人いるかな。

と言って、いいところを見つけさせた。



<完成> Q&A−酒井臣吾先生のコメント−   ページTOPへ  作品集へ

〈Q:賀本から  A:酒井臣吾先生より〉

Q1 船は想像して描くので、とても楽しく描いていました。しかし、人物になると実際の自分であり、お父さん、お母さんであるので、描きにくそうでした。また、人物が小さいので、どうしても「マンガ的」な人物になってしまいます。このような小さい人物を描かせるときのポイントを教えてください。

A1 小さい人物の描き方は酒井式でやります。
   まず「何かをしている手を描きなさい」
   次に「頭を描きなさい」「足を描きなさい」「つなぎなさい」



   上のようにやると全く動きがでます。これはクセになるようにさせましょう。小さい人物なら小さい人物ほど動きが大胆につけられるようになります。


Q2 イメージがどんどん膨らむのか、次々に描きたす子がいました。結局彩色の段階で、たくさん塗ることになるのでいやになり、ザッと塗ったり、同じ色ばかり塗ったりしていました。こんな子はどのように指導したらよいのでしょうか。

A2 このような子どもの方がやりやすいのです。どんどん進みたいのを待たせられないのは教師の腕が未熟だからです。しっかり待たせましょう。一歩一歩進むことの楽しさをわからせることです。この子はどんどん伸びる子です。


Q3 隣のクラスも実践しました。指導後、隣のクラスの先生が次のように言いました。

   「4年生になると、実物を見ないで想像して描くことができにくい子がいるね」

   私のクラスにも、Q2のような子とは反対に、なかなかペンが進まない(進んでもかたく描く)子がいました。どのように指導したらよいのでしょうか。

A3 そのような子は確かにいます。先生のクラスにもいますね。これは子どもが悪いのではなく、先生の指導力不足なのです。このような子をどうするかではなく、酒井式をもっとしっかり教師がとらえてやらねばなりません。やわらかい「かたつむりの線」を少しずつ教えていきましょう。一回ですぐによくなるわけにはいきません。特に5年6年になるともっとガンコになります。子どもに負けないで断固として指導していきましょう。


〈指導者へのコメント (酒井臣吾先生より)〉

全体として見て、子どもは楽しくしかも根気よく描き切っています。これはいくらほめてもいいことです。あとは先生の腕を少しずつ上げていきましょう。形はまずまずの合格ですが、彩色の指導は全くダメです。
@一回色を置いたところは二度三度とぬらないこと。
Aもっと大胆に色の変化をつけること
Bパレットの上でしっかりと色を作ってから画面にソッと置くこと
Cあちらこちらとぬらずに隅から少しずつぬっていくこと

これらをしっかり守らせてください。夏の実習で教えますので、先生も今度は実際に描いてみてください。


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