(C)TOSSインターネットランド /小学校/6年生/図工/酒井式/百羽のつる/
賀本俊教(TOSS淡路キツツキ)
完成までたった6時間。運動会が終わって、校内図画コンクールに向け、作品を仕上げなければならない。「あまり、時間がないな」「でも、それなりの作品は仕上げたい」そんなときにお薦めなのが、「百羽のつる」である。 作品集へ
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<準備物> @ 花岡大学著『百羽のツル』(戸田デザイン研究所) |
![]() 情景描写が大変素晴らしい。 「つる」を描くときにも参考にな る。 |
<シナリオの概略>
<第一幕(45分)> お話を聞いて、構図を考える
<第二幕(45分)> まわりの様子(背景)を描く
<第三幕(30分)> 空を彩色する
<第四幕(45分)> 空以外のまわりの様子を彩色する
<第五幕(90分)> つるを描いて彩色する
<完成> 第7回TOSS酒井式描画Web美術展−酒井臣吾先生のコメント−
<第一幕(45分)> お話を聞いて、構図を考える ページTOPへ 作品集へ
花岡大学著『百羽のツル』(戸田デザイン研究所)を購入する。この絵本は、情景描写が大変素晴らしく、造形しやすい場面がたくさんある。情景の美しさはもちろんのこと、この物語の登場人物である百羽のツルの行動や心情が、読み手にしんしんと伝わってくるのだ。仲間のツルに迷惑をかけまいと、黙って落ちていく子どものツル、そのツルを助けようと心を1つにして行動する99羽のツルたちに、子どもたちは感動する。
『百羽のツル』という絵本を読みます。
絵本を読み終えたら、静かに語りかける。
どの場面が印象に残りましたか。自分の描きたい場面を1つだけ選びましょう。
何名かを指名する。
C ツルたちが目的地を目指して、必死で飛んでいく場面です。
C 子どものツルをみんなで助ける場面です。
C 先頭のツルが、子どものツルを抱いて湖を目指して飛んでいる場面です。
では、もう一度読みます。自分の描きたい場面の様子を思い浮かべながら聞きましょう。
お話を聞かせたあと、頭の中でぼんやりと思い浮かべたイメージを、下描きすることによって少し補強し、よりはっきりしたイメージにしてあげる。B6下描き用紙を配る。
ここで気をつけることは、
・つる・山・木などを水平、垂直に描かないこと
・つるの大きさに変化をつけること
の2つである。
C 先生、今回は記号人間じゃなくて、〈記号鳥〉でいいんだね。
T そうです。構図を考えるんだから、詳しく描く必要はありません。お話を聞いて、心の中に
見えたものを簡単に描きましょう。
T 言葉も付け足していいですよ。
T 何色にするか、色もメモしていいですよ。
机間指導しながら、子どもたちがよりイメージしやすいように指示する。
〈A君の下描きとメモ〉

冬なので、寒いイメージを出したい。
空には、まん丸い黄色の月が出ている。だから、空はまっ黒ではない。
山には雪が積もっている。
つるたちは、湖を目指して飛んでいる。
子どものつるは、先頭のつるにかかえられている。
ほとんどのつるが、体力の限界ににっているけど、必死になって飛んでいる。
この下描きの段階で、つるの動きをだいたい考えておくと、茶ボール紙に書くときに、スムーズに描くことができる。
この時間は、子どもたち一人ひとりの思いを十分聞いてあげよう。
<第二幕(45分)> まわりの様子(背景)を描く ページTOPへ 作品集へ
四つ切り茶ボールを配ったあと、次のように言う。
今日は、この茶ボール紙に鉛筆でまわりの様子を描きます。下描きを参考にしながら描きましょう。
まず、背景を全て完成させてから、つるを描くことにする。
初めにつるを描いて彩色したあとから、背景を彩色させてしまっては、せっかくのつるの羽が背景に埋もれてしまうからだ。
子どもたちは、雪をかぶった山々、大小の満月・半月・湖・川・森林など、自分の思い浮かべたものを描いていった。
<第三幕(30分)> 空を彩色する ページTOPへ 作品集へ
次のように言う。
今日は、月と空を塗ります。自分のイメージした「月の色」と「空の色」を作りなさい。「空の色」は、「夜更けの空」だから、黒か藍色を塗らなければならないということはないのです。自分のイメージした好きな色を作りましょう。
C 冬だから風も吹いているかもしれない。暗い寒そうな色にしよう。
C 月で照らされているから、真っ暗ではないと思うよ。私は、濃い青を塗りたいな。
C 日の光に似た紫の空にしよう。
色が作れたら、次のように言う。
まず、月を塗ります。「よ〜い、スタート」。
次に、空を塗ります。月のまわりから塗り始めて、段々と色を変えていきます(前でやってみせる)。「よ〜い、スタート」
さて、ここで気をつけることは、
水の量
である。
茶ボール紙は地の色が濃いので、普段使っている画用紙に彩色するよりも、少し濃いめに色を作るとよい。
また、茶ボール紙は水をよく吸うので、絵の具と水をたっぷり用いて多めに色を作っておいた方が作業がスムーズに進む。
そして、太筆を使って、ぐいぐいとダイナミックに彩色させたい。
<第四幕(45分)> 空以外のまわりの様子を彩色する ページTOPへ 作品集へ
子どもたちの持っている水彩絵の具で、自由に彩色させる。
今日は、月と空を塗ります。自分のイメージした「月の色」と「空の色」を作りなさい。「空の色」は、「夜更けの空」だから、黒か藍色を塗らなければならないということはないのです。自分のイメージした好きな色を作りましょう。
C 冬だから風も吹いているかもしれない。暗い寒そうな色にしよう。
C 月で照らされているから、真っ暗ではないと思うよ。私は、濃い青を塗りたいな。
C 日の光に似た紫の空にしよう。
色が作れたら、次のように言う。
まず、月を塗ります。「よ〜い、スタート」。
次に、空を塗ります。月のまわりから塗り始めて、段々と色を変えていきます(前でやってみせる)。「よ〜い、スタート」
さて、ここで気をつけることは、
水の量
である。
茶ボール紙は地の色が濃いので、普段使っている画用紙に彩色するよりも、少し濃いめに色を作るとよい。
また、茶ボール紙は水をよく吸うので、絵の具と水をたっぷり用いて多めに色を作っておいた方が作業がスムーズに進む。
そして、太筆を使って、ぐいぐいとダイナミックに彩色させたい。
<第五幕(90分)> つるを描いて彩色する ページTOPへ 作品集へ
ほとんどの子どもたちが、つるをよく知らない。
もし、これが低学年であれば、頭の中にある漠然としたイメージで「つるらしき鳥」を描いて、それで満足するであろう。
しかし、高学年となるとそうはいかない。なぜなら、高学年になると自己評価が厳しくなり、本物に近い表現ができないと自分の表現に満足しなくなるからだ。
そこで、休み時間を利用して、図鑑などでつるを調べてみるよう話をした。
(B6下描き用紙を配り)調べたつるを下描きしましょう。
下描きができたら、次のように言う。
まず、鉛筆でつるを1羽だけ描きます。画面のどこに描くか、指で押さえてごらんなさい。かたつむりがスタートします。よ〜い、スタート。
この1羽目のつるは重要である。
全力投球
で描かせてほしい。このつるが自分の気に入ったものになれば、あとはバッチリだ。
子どもたちは、下描きのつるを参考にしながらていねいに描いていた。絵本を貸してほしい子がいたので、貸してあげた。彩色した背景の上に描くことになるので、一層慎重になる。つるを描くときのポイントは、
首を長く描くこと
である。「首を長く描くこと」によって、よりつるらしくなる。
次に、つるに色を塗ります。まわりの様子を描いたときよりも、少し濃い目に色を作りましょう。
つるを彩色するときは、
小筆と面相筆
を使わせる。この2本を使い分ければ、細かいところもきれいに塗ることができる。
また、パレットがきれいになっているかどうかも確認した方がいい。パレットが汚れていては、美しいつるに仕上がらないからだ。
1羽目のつるが塗れたら、次のように言う。
今度は、つるを4、5羽描いたら、色を塗りましょう。
ここからは、つるを4、5羽描いては、それに色を塗るという作業を続けることになる。自分の絵を眺めながら、「ここにもっと描こう」「あとはどこに描こうか」とじっくり考えさせたい。子どもの力を信じる。そして、あとはうんとほめればよい。
T 本当に飛んでいるみたいだね。
T 色の塗り方を工夫したね。羽がふさふさしていて本物みたいだね。
T 力強い飛び方だね。
もちろん、初めに下描きしたときの構図と変わってもいい。イメージは、描きながら変わっていくものだ。話を聞いてすぐに下描きしたときと、大きな画用紙に描いているときとでは、感じ方がちがって当たり前だ。
<完成> 第7回TOSS酒井式描画Web美術展−酒井臣吾先生のコメント− ページTOPへ 作品集へ
どの子も生き生きと、しかも真剣に絵を描くことができた。そして、でき上がった自分の作品に満足していた。また、どの絵からも、その子なりの工夫や努力が感じられた。
それは、「茶ボール」という画材と「指導課程」が子どもたちにぴったり合っていたこと。「本時で何をするか」がはっきりしていたからだろう。
授業中にも、
C ○○君のつるは、ほんとに空を飛んでいるみたいだ。
C ○○君の月はきれいだなあ。
というように、友達の作品の良い点をほめ合う会話が聞かれた。私も気持ちよく授業することができた。
最後に、「第7回TOSS酒井式描画Web美術展」(2003年8月)に出展した作品に対する「酒井臣吾先生のコメント」をご紹介する。
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〈子どもたちの絵へのコメント (酒井臣吾先生より)〉
作品1 空の流れ、鶴の動きがすばらしい。
作品2 鶴の一羽一羽が、よく配置されている。
作品3 空の澄み切った空気が感じられる。
〈指導者へのコメント (酒井臣吾先生より)〉
完璧な指導です。これからもがんばって下さい。
この上ないうれしいコメントを、酒井臣吾先生よりいただくことができた。酒井臣吾先生には、毎年淡路島に来ていただき、講座にて直接ご指導受けている。これからもさらに精進を重ねたい。