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ミドリ十字と吉富製薬が合併(1997年2月24日発表)
大枠
血液製剤のトップメーカーであるミドリ十字と、製薬メーカー準大手の吉富製薬は、10月1日付けで合併すると発表しました。
仕組み上、吉富製薬が存続会社(そのまま引き続き業務を行う)となって、ミドリ十字が解散することとなっています。合併比率は吉富製薬が1に対して、ミドリ十字が0.6ですから、ミドリ十字のカ5株が吉富製薬の株3株に割り当てられます。会社規模(資本金・売上げ)がほぼ同じ企業で、このような合併比率であると、ミドリ十字の方が救済された、と思うかも知れませんが、合併発表時点での両者の株価の比がほぼミドリ:吉富=3:5なので、妥当な合併比率と考えられます。
社名は当分の間「吉富製薬」となりますが、21世紀スタートをめどに新社名にすると報道されています。
5月21日の記者会見
テレビでは21日夜に報道されたことですが、2社の合併は半年延期されて、1998年4月1日づけで行われることになりました。
薬の販売権の移転や書類の統一などに予想以上の時間を要することがわかったため、と両社では説明しています。
ミドリ十字の現状
ミドリ十字は、1996年の薬害エイズ和解以来、ミドリ製品の不買運動にさらされ、大幅に売上げが減少(96年3月期決算で5億3000万円の赤字)し、また支払うべき和解金の額は240億円にものぼります。「自主再建の感触はあった」と合屋社長は発表しているものの、厳しい経営環境にさらされ続けることは確かです。また、ミドリ十字には過去にも問題を抱えており、方法(合併などの)はともかく、イメージを一新できるような方法を探っていたことは十分に考えられます。
メディアの分析
この合併を、「薬害エイズの問題を製薬業界全体でフォローする」ととらえているメディアもあります。というのは、吉富製薬が製薬業界最大手の武田薬品工業の関連会社であることに関係があります。薬品トップが、薬害問題に直面した企業を支配下においたという図式から導き出したものなのでしょう。(その辺の考察は、みなさまもご自由に)
製薬業界の現状
私は、今回の合併を「薬害エイズの問題によってミドリ十字が危機に追い込まれたから」という理由でくくるのには、賛成できません。確かに、ミドリ十字1社での経営が苦しいというのは、合併への1つの弾みであることは間違いがないと思いますが、それだけでは「吸収」する事になる吉富製薬の経営を逆に苦しい方向へと押しやることになってしまいます。どこに合併のメリットがあるのかを考えることが大切です。
そのメリットとは、今の日本の製薬業界をちょっと知ると見えてきます(ちょっとだけですよ>詳しく知っている人は教えて下さいね)
今年に入り、日本でエイズ治療薬(正確に言うとHIV治療薬)の新薬5つが相次いで登場しました。これは、今までの新薬の承認(臨床試験開始から発売まで約5年)とは違い、半年(臨床試験の開始と新薬としての申請が同時)で承認という、ハイスピードで行われました。これは、薬害エイズ問題が和解し、被害者救済という面から厚生省がHIV治療薬に限り申請・審査の方針を転換した結果です。欧米での承認・採用実績が国内新薬の審査に取り入れられる、その第1歩となっています。(5新薬は、欧米では以前から採用されていました。)
また、1996年5月にワシントン近郊で行われた「医薬規制ハーモナイゼーション国際会議」の運営委員会で、新薬の臨床試験に関する統一基準が決められました。これによって、国を越えて臨床試験のデータがやり取りできる道が開けました。
それがどのように日本の製薬業界に影響を与えるのか。
今までは、外国で新薬が登場しても、日本での臨床試験をパスするまでの期間、日本でその新薬は発売できなかった。したがって、その時間を利用して日本の製薬メーカーは新薬を開発・臨床試験を行い、結果的に外国製と「同時」に新薬を発売することができ、シェアを保ってきました。(今回の薬害エイズ問題は、まさにこのシステムが悪い方向に利用されて起こったのでした)しかし、外国の臨床試験のデータが利用できることになると、まさに早く新薬を開発した者が全世界でシェアを獲得できる、という状態になるのです。ということは、製薬会社の開発力が勝負になってくるわけです。
そこで日本とアメリカを比較してみると、大手10社の平均の研究開発費は、日本320億円に対してアメリカ9億ドル(約1000億円)と大きな差があります。また外国でも製薬会社どうしの合併は起こっているようです。日本の製薬会社が生き残るためには、企業の「大型化」が必須な状況になりつつあるのです。
そのような現状から考えると、今回の2社の合併は、製薬業界の現状を反映したものといえなくもありません。
薬害は終わらない
当たり前のことですが、ミドリ十字の薬害エイズ問題における責任は、合併によってもなくなることはありません。新会社においても、ミドリ十字が負うべき補償は引き続き行われます。それは当然として、「ミドリ十字」という問題のある企業がなくなると同時に、どう考えても「利益本意」だった「命を預かる商売」に、発想の転換もおこって欲しいと思います。
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