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輸血によるHIV感染が発生(1997年5月24日)


大枠

 今年3月に大阪府内での献血がきっかけでHIV感染に感染していることがわかった人が、1996年10月にも京都府内で献血し、その献血された血液がすでに輸血に回され、使用されていたことが、大阪と京都の赤十字血液センターの調査でわかりました。
 なお、厚生省の調べによると、1986年に献血された血液にHIVの抗体が存在するかを確認する検査を実施して以来、毎年10件から40件程度の感染が報告されており、昨年は6,039,394件の献血のうち46人のHIV感染者が判明しているということです。

(ニュースの出所:朝日新聞1997年5月24,25両日朝刊)

簡単に言うと...

 日本国内の献血によって提供された血液の中にHIVが含まれていたものがあり、それが輸血に使用されることによってHIVに感染する人がでた、ということです。これまで、このような経路による感染はないとされていました。(あとでさらに詳しく)

なぜこのようなことが起こるのか

 献血によって提供された血液は、全てHIV検査にかけられ、HIVが存在するかしないかが調べられます。そしてHIVに感染していることがわかった血液については焼却処分されています。そのようなことから、輸血によるHIV感染は血液製剤によって起こった「薬害エイズ」以降はないとされてきました。では、なぜ今回このようなことが起こったのでしょうか。日本赤十字社の検査にミスや問題があったのでしょうか。
 まず、検査のミス等はなかったと考えられています。つまり他に原因があるということです。

HIV感染におけるウインドーピリオド

 今回この問題が報道されて、初めて紹介された言葉ですが、「実際にHIVに感染してから、HIVに感染したことが検査等でわかるようになるまでの期間」のことです。つまり、HIVに感染したらすぐに検査でHIV感染が判明するわけではないのです。通常、HIVに感染してからHIV感染が検査によって確認できるようになるまでは、6〜8週間かかるといわれています。つまり、「ウインドウピリオド」の時期には、たとえ検査を受けたとしても「陰性」と診断されて、感染していることがわかりません。
 今回の問題は、HIV感染者がこの「ウインドーピリオド」のあいだに献血をしたことによって起こったのです。そのHIVに感染した血液はHIV検査をパス(血液がHIVに感染していないと診断される)して輸血に提供されてしまったのです。

ウインドーピリオドはなくならないのか

 栗村(1997)によると、「検査対象によってウインドウ期の長さは異なるが、このウインドウが閉じられることはない。したがって、献血者が近い過去にリスク因子をもったことを隠して血液を提供することがあれば、いかなる検査方法でもHIV感染を判定できない時期があるということである。」としています。つまり、どのような検査を行っても、HIV感染がわからない時期があるということです。

それでは...

 それでは、どうすれば今回発生したような問題(ウインドーピリオドに献血された血液が輸血に提供されてHIV感染が起こってしまう)を再び発生させないようにすることができるのでしょうか。
 どれくらいの長さであれ、どうしてもHIV感染がわからない「ウインドーピリオド」が存在するのだとしたら、HIV検査に対して今以上の精度を求めるのは難しいでしょう。(実際、現在の赤十字で行われている検査は、現在の技術ではベストに近いといわれています)とすれば、「献血をする側」が注意しなければならないわけです。つまり、献血をHIVに感染しているかどうかを調べる手段にしないことはもちろんのこと、「HIVに感染しそうな行為」(具体的には無防備な性行為など)をしたら、
HIVに感染していないことがわからない限り献血を行わないようにしなければなりません。そのようなモラル(ある面で常識)が献血をする側に求められるのです。

応用
情報を提供する立場として

 今回のニュースは、HIVやエイズに関する情報を提供する者の姿勢を問い直すことになると考えています。これまで、輸血によるHIV感染は、検査態勢が確立されているため「心配する必要はない」と、ほとんどの情報提供者は伝えてきました。
 例えば厚生省・エイズ予防財団発行の「エイズ読本」では、「血液媒介感染について」という項目で
「現在では、輸血や血液製剤に対する対策が進んでいますので、これらによる感染の心配はありません。ただし、感染者の血液にはふれないようにして下さい。」
と記しています。しかし、今回の問題の発生で、この記述について見直しをしなければならなくなったはずです。実際に献血によってHIV感染が発生してしまったわけですから。

 ただし、これから作る資料に、「輸血によってHIVに感染する可能性があります」と記述することが、必ずしも正確な情報を提供することにはならないと思います。献血された血液の中にHIVに感染したものが含まれている可能性は非常に低く、その中にウインドーピリオドに献血されたものとなれば、さらにその数は少なくなる(0に近くなる)からです。それなのに「輸血によってHIVに感染する」という情報が一人歩きをすれば、輸血が有効な治療でさえも行われなくなってしまう(そうすることによって、病気が治らない人もでるのかもしれません。)からです。
 この、「輸血によるHIV感染の可能性は限りなく0に近いけれど、0ではない」ことをどう伝えれば、正確に伝えられるのか、ということは、私自身、結論を出せていません。(このような情報は、多くの場合大げさに伝わってしまうからです)

 ちなみに、高校の時に私たちが作った冊子には、「配布の対象を高校生に限定する」という条件をつけた上で、以下のように書きました。

『輸血によってHIVに感染する可能性はほとんどないが、輸血が必要になったときは、
・わずかなHIV感染の可能性を認識したうえで、血液の提供を受ける
・血液の提供を受けないで、病状が悪化してしまうことも考える
そこまでよく考えて、治療を受ける必要がある。』

あなたは、どう伝えるべきだと考えますか?


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