人物を撮る1(声をかけて撮る)


 人物の撮り方の代表的なものとして、ポートレート(肖像写真)とスナップがあります。スナップが相手に気づかれないようサッと撮るのに対し、ポートレートはあらかじめ撮影する意思を伝えておいて撮るという点で異なります。

Vancouver(Canada)

 ポートレートの出来映えは、背景に気を配るかどうかで違ってきます。とくに樹やポール(日本のように電柱はあまり見かけませんが)のようなくっきりとした線が写り込む場合には、それが人物の頭や首の部分を貫かないようカメラ位置を工夫して撮ることが肝心です。また、AF(オートフォーカス)カメラでは性質上ピントを合わせたい部分を中心に置きがちですが、顔の位置はど真ん中より少し上にもってくるほうが比較的安定した構図になります。あとはどれだけモデルからいい表情を引き出せるかがポイントです。コミュニケーションが第一。

 ところで、見ず知らずの人に声を掛けるのは、なかなか勇気のいることです。しかも、外国で相手が日本語を話すことはまずありませんから、それを思うとますますおっくうになってしまいます。でも、難しく考えないで、ぱっと見てなんとなく撮らせてくれそうな人だなあ、と思ったら、明るく「やあ」とか「一枚いい?」とか、とりあえず声を掛けてみましょう。できればその国の言葉で「こんにちわ」「撮らせてください」「ありがとう」ぐらいのカタコトを事前に調べておくとよりベターです。英語が通じることも多いですが、「エクスキューズミー、メイ・アイ・テイク・ユア・ピクチャー」と日本語読みの英語なら、最初っから日本語で身振り手振り交えてのほうがいいかも知れません。

Leiden(Netherlands)

 とはいうものの、世界には写真に撮られると魂が抜けると信じている人もいるかもしれませんし、モデルになったらモデル料をもらうことが当然と考えている人もいるでしょう。何事もある程度慎重に行うのが海外旅行での鉄則です。そのへんは頭に入れておきましょう。

 ニューヨークに、黒人の多く住むハーレムという地区があります。ガイドブックには危険地帯と書かれており、添乗員なども散策をあまり薦めません。いったいどんな感じのところなのか?恐る恐る行ってみることにしました。
 カメラを鞄にしまいこみ地下鉄の駅を出てみたものの、最初はビクビク。きょろきょろするのは危ないので、人通りの多い通りを人と目を合わせないよう注意しながら歩いて行くと、道端でレコードを並べて売っていました。何気なく覗きこんでいたら、大きい黒人のニイちゃんが寄ってきて何やら説明を始めます。このレコードのね、ピアノ弾いてるのは素晴らしいピアニストでね...、俺の言ってることわかるかい? それはジャズのレコードでした。ふんふんうなずいていると、彼は次々レコードを引っ張りだし私にジャズについて語りはじめました。言葉はあまり分かりませんでしたが、熱っぽい語り口を聞いてるうちに値段の手頃感も手伝って、彼のお勧めを数枚買うことにしました。カメラを取り出し、記念に一枚撮らせてよ、と(それらしき英語で)言うと恥ずかしそうにポーズをつけてくれました。これはその時の一枚です。


NewYork(USA)

 パッケージツアーの短期間旅行では観光スポットをあわただしく回るのが精一杯で、その国の人達と交流を深める、なんてことはとうてい無理です。そんな中でたとえわずかでもカメラを通して土地の人々と心ふれあう一瞬が持てたら、旅の印象も一味ちがったものになると思います。さあ、声をかけて撮ってみましょう。


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