神我人と阿主沙

第3話 2人の賢者





さて、砂沙美が李美の招賢館をたずねた日の夜、李美は船穂に面会していた。
「ほう、李美殿が、ずいぶん惚れ込んだようですな。」
「はい、あの者はまさに神我人を打ち破る大元帥たる人物でございます。」
「して、その者の名は?」
「樹雷の城下の屋敷に暮らす、砂沙美と申す者です。」
「砂沙美!?」
船穂が反応した。
「おや、軍師殿は砂沙美をご存知でしたか?」
「え、ええ・・、あまりかんばしからぬ噂を耳にしています。」
「ほう、どのような?」
「町でならず者に囲まれたとき、大衆の目の前で土下座した臆病者だそうな。」
衝撃的な船穂の言葉であったが、李美は動ぜずに話を続けた。
「ほう、私の出会った砂沙美とはずいぶん違いますな。」
「では、李美殿が惚れ込んだ砂沙美とはどのような人物であるのですか?」
「はい、私はいろいろ試しましたが相当な人物と睨みました。
 それゆえこうして軍師殿に会いに来たのです。」
「ふむう、なるほど、李美殿がそこまでいれこまれた人物ならば確かかもしれませぬ、しかし・・・」
「しかし?」
「大王はそういう風説を少々重く見るところがあります。いかに砂沙美が優秀な人物でも決して重くは用いないでしょう。」
「ですがこのまま追い返すにはあまりにおしい。軍師殿もぜひ会って欲しいと思います。」
「李美殿がそこまで言うなら・・・会ってみましょう。」
船穂の李美に対する信頼は厚い。
李美のたっての願いに、船穂も心を動かされたのである。

翌日、砂沙美は礼服に着て招賢館に向かった。
李美に呼ばれたからである。
招賢館の門をくぐると李美が出迎えた。
「やあやあ砂沙美殿、ようこそいらっしゃいました。」
「これは李美殿。」
「今日は砂沙美殿に会ってもらいたい人物がおります。」
「ほう。」
李美は砂沙美を奥の間へと通した。
砂沙美はその間にいる人物を見て少々面くらった。
そこにいたのは樹雷の総軍師、船穂であった。
「貴殿が砂沙美殿であらせられるか?
 私は船穂と申します。」
と言って頭をさげた。
さすがは樹雷皇家第一皇妃である。
ふかく礼を尽くした一挙一動はまさに「キヒン」というものを感じさせる。
「これは、お初にお目にかかります。
 私は砂沙美と申します。」
砂沙美にしても負けてはいない。
魎皇鬼という祖先に名をもつ人物と同居している間に身につけたその作法は、樹雷の皇妃と比されても全く見劣りしなかった。
また、ともに絶世の美女である。
そこに加わる李美も、これもまた美女ながらこの二人の間に入ればかすんで見えてしまう。
お互いに自己紹介を終えると船穂と李美は召使いに食事をはこばせると、宴を楽しむよう砂沙美にすすめた。
砂沙美も、樹雷の皇妃たるもの誘いを断るのは非礼であるし、もとより断る理由もないので座についた。
一通りの挨拶をすませ、まず、船穂が砂沙美に語りかける。
「砂沙美殿は兵学に精通したりと李美殿より聞き及びましたが・・?」
「いや、それはおおげさです。
 少々書を読む術を知っているだけに過ぎませぬ。」
「いえ、それはあなたのご謙遜でしょう。
 この李美殿が自信をもってわたくしに推挙して参ったのです。
 『術を知るだけ』などという凡人ではありますまい。」
すると今度は李美が
「私は自信をもって推挙いたせます。」
と言う。
お互いの遠慮しあい、おだてあいが一通りすむと、いよいよと言ったテイで船穂が口を開く。
「さて、砂沙美殿は我が樹雷の情勢と今回の敵の進軍に対してどうみておられますかな?」
砂沙美はしばし考えたあと、しゃべり始める。
「今回の敵の行軍は明らかに偽りでございましょう。」
「ほうそれはどうして?」
「時城は小城ながら背後には山がそびえ、1万の強兵があれば十分守るに足ります。
 それに樹雷から援護がこないわけがございませぬ。
 そのような地点に対し、この進軍法はきわめて愚で無策でしょう。
 敵方の将の能力から察するに、これは明らかなる誘計でありましょう。」
「なるほど、それでは敵はどういう手を用いてきますかな?」
「簡単です。
 南樹を攻めるでしょう。
 南樹は要害堅固なれど、守備兵は油断多く、また、険しい地形であるため、樹雷の諜報能力も追いついていません。
 さらにここをとれば南方から樹雷の天樹を脅かすには都合がよく、敵軍を牽制し、多方面からの進行を促すにはもってこいです。
 しかし・・・」
「しかし・・?なんです?」
船穂は正直、砂沙美の見解が自分のものと全く同じであるのに驚いていた。
この若さでここまで敵の意図を見抜くとは、と。
だが砂沙美にはまだ続きがあるようである。
「この計も明らかに誘計と思われます。
 南樹はいかに油断ありといえども要害です。
 したがって、いかに士気のない雑兵相手でも占領に日時を要する危険があります。
 また、樹雷に軍師船穂殿がおられることは、敵方もよく承知のはず。
 この程度の計が読まれることは計算の上でしょうな。」
「なんと!?」
船穂はここまで砂沙美の説明を聞いて愕然とした。
自分にも闥亜にもあった心配事であったが、所詮推測の中の推測でしかなかった。
しかし、この砂沙美は断言してみせたのである。
「し、しかし砂沙美殿!いったいどこの進行路を・・?」
「道など必要ありません。」
「は?」
船穂と李美ははじめ、砂沙美が何を言っているのかわからなかった。
しかし、時とともにその真意を悟って顔色を変えた。
「まさか・・水軍!?」
砂沙美はコクッとうなずいてみせる。
「いいいいいったい、どこの河川を!?」
李美は慌てふためいて砂沙美にたずねた。
「さて、そこまでこの砂沙美は存じませぬ。
 私はこの樹雷で数年暮らしておりますがあまり樹雷の水路防衛に関しては知識はございません。
 どこの河川か、あるいは海か、それは船穂様のほうがよく知っておられましょう。」
李美はいそいで地図をひっぱってくると、船穂はあわてて水路の確認をはじめた。
もともと樹雷は山岳地帯である。
そのため、山岳戦は得意であるが水上での戦闘となると一気に不利になる。
また、そういう発想自体がなかなか生まれてこない。
阿主沙にしても船穂にしても闥亜にしても、水上戦というのは極めて異例。
百戦錬磨の闥亜でさえ、経験は一度あるかないかである。
それに、水上戦の達者な将は樹雷ではなく、他の地方を守っていた。
それがこの戦いでほとんどが戦死してしまっている。
よって、樹雷の将たちは、水上での戦闘という発想をなかなか持てない。
それを見越した瑜免の計略であった。
もうこれ以上奇襲ルートがないことを認知した上での計略である。
船穂と闥亜は以前よりも一応水軍の人数をふやし、調練を重ねているが陸兵ほどの備えはない。
また、樹雷には水軍の調練を満足にこなせるほどの将がいないため、もとより十分な調練などできはしない。
招賢館にも水上の用兵に長けた人物は現れていない。
その備え無きを改めその不意を出ず。
まさに兵法にかなう戦略である。



さて、こちらは无死魔迎撃に向かった闥亜率いる1万の軍勢である。
魎皇鬼もこの軍に従軍していた。
无死魔とにらみあいを続けていた闥亜軍であるが、ついにその戦いの火ぶたは斬って落とされた。
まずは両将の一騎打ちにて戦は開始されたのである。
「賊将无死魔、南方の鼠めが!我が大国の境を侵して何を求めるか!」
と闥亜が无死魔を罵れば、
「国賊阿主沙を誅し、天下に太平を求むるは人の道。汝ら小人にはわからぬのならば斬って捨てる!」
と罵り返す。
「何ッ!もう勘弁ならぬ、虫フゼイが、その首をさらしてくれる!」
闥亜は馬に一鞭いれて戟を手に无死魔に向かう。
「下郎など相手にしたくはないがやむおえまい。まいられい!」
无死魔も槍をかまえて迎え撃つ。
両者の武器が火花を散らす。
闥亜の戟が无死魔の兜をかすめたかと思えば、无死魔の槍が闥亜のわき腹あたりをかすめる。
まさに実力伯仲、両者の激戦は100合にも及んだ。
やがて无死魔が
「闥亜、さすがに樹雷の名将よ。闇もかかるゆえ、今回はここまでといたす。」
といって馬を返せば、闥亜のほうも
「さすがに无死魔、他の賊徒どもとは一味違う。明日からは我が軍が総攻撃をかけるぞ!」
といって各々の陣へ帰り去った。

その夜。
「なあ天地、ぼくたち生きて帰れるかな。」
魎皇鬼である。
「さてね。」
答えるのは彼と同じ軍に編入された天地である。
「天地、ぼくは家に残してきた人がいるんだ。」
「へえ、奥さんがその年でいるのかい?」
「いやいや、今のところただの居候さ。」
当然これは砂沙美のことである。
聞いているとカッコイイ会話である。
「今回の戦い、一つ気になることがあってさ。」
「なんだい?」
「敵軍の侵攻についてだよ、敵の備えを見て思ったけど、とりあえずここに本軍をおくりこまないのは確かだね。」
「どうして?」
「いや、少し考えればわかることさ。」
ここで、魎皇鬼もまた、天地に敵の計の説明を始めた。
彼の見ぬいた計は砂沙美のものと全く同じであった。
「へえ、なるほど・・・ってそれが事実なら!」
「ああ、天樹が危ない。
 あれほどの大要塞ならそうそう簡単にはおちないだろうけど、間違いなくこのへんの城は全部おちるね。
 闥亜様、気づいているかなあ・・。」
「じゃあさ、闥亜様に意見を言って取り上げてもらおう!」
天地がとんでもないことを言い出した。
「え?何を言ってるんだ天地!闥亜様になんか会えるわけないだろ!
 それにぼくが読んだ計も所詮推測なんだし。」
「忍び込むんだよ!闥亜様の寝所まで!」
とんでもないことである。
見つかったら即死罪だ。
「そんなむちゃな!!」
「魎皇鬼、お前はここにいろ、待ってる人がいるんだろ。」
「けど、天地・・。闥亜様のところまでたどりつけたって死罪の可能性大だぞ!」
「いや、闥亜様はそんな人じゃない。」
そう言って、天地は出ていった。
「ぼくが変なことを言ったばかりに・・・。はあ・・。」
魎皇鬼は悔やんでいた。
しかし、この天地の純粋で一途で子供っぽい単純な正確が、のちの神我人との戦いにおいて、大きく役立つのである。

「・・・・むうっ?」
闥亜は眠りにつこうと閉じたばかりのマブタを開いた。
何者かの気配を察したのである。
さすが闥亜だ。
「闥亜様・・闥亜様・・・。」
テントの幕ごしに声が聞こえる。
「何者じゃ?」
「名乗るほどのものではございませぬが、寝所の前の番兵を下げてくだされ。」
「目的は?」
「愚見を述べたくて参りました。」
「よし。」
それだけの会話で闥亜は番兵をさげた。
声が聞こえないようにするためである。
「出てこられい」
闥亜がそう言うと、テントの入り口から天地が入ってきた。
こうもあっさりと天地を入れたのは、闥亜の度量の大きさとおのれの剣の腕による。
「貴公は何者だ?」
「樹雷軍の兵卒の天地と申します。」
「ほう、兵卒のきみが、なぜこんな夜に訪ねた?愚見と申しておったがそれは?」
「はい、今の樹雷の防衛を危ぶむものにございます。」
そして天地は、魎皇鬼に聞かされたその敵の策を闥亜に述べた。
聞き終えると闥亜は顔面蒼白して
「兼秋!兼秋を呼べ!」
とテントから顔を出してどなった。
そして天地にむかって
「その計はご自身の考えか?」
と問うた。
「知ってどうなさります?」
「しれたことよ、我が軍の参謀として召抱える。」
普通こういうことを言われるとはい自分ですと言いたくなるところである。
しかし、天地は安堵して言った。
「これはそれがしの見解ではございませぬ。
 愚見などと、いかにも己の策のように見せかけたのは、その者に責めを追わせないためにございます。
 しかし、出世とあらば名は隠しますまい。
 樹雷の生まれで名は魎皇鬼、私とはこたびの従軍よりの友にございます。」
これを聞いて闥亜は思った。
『これほど友のことを思う男だ、さぞ度量は広いのであろう。
 また、このわしの寝所まで忍び込むとはかなりの腕か・・・。
 それにこの計を見破ったという人物・・。
 すばらしい・・・。』
そこへ兼秋が来た。
「およびですか・・・闥亜様・・・、おや?そこの少年は?」
「この者はこれより我が軍の1将として、活躍してもらう人物の天地である。」
これを聞いて驚いたのは天地である。
しかし、それについて口をひらく以前に闥亜が、
「その魎皇鬼とやらを呼んできてくれ。」
と天地に命じたので、天地は何も言う前にさがることとなった。(むろん、通行証はもらった)

その後、闥亜は兼秋に言った。
「私はあの者とこの見を持った人物とを用いてみたいと思う。君の意見を聞きたい。」
兼秋は少し考えて答えた。
「将軍、しごくけっこうでしょう。しかし、万が一に備え、二人には監視をつけ、軟禁状態におくが上策かと。」
「それでは賢者をもてなすに礼を失するではないか。」
「いや、その程度でつむじをまげる程度の志しかもたぬ小人は、失っても惜しくはありますまい。」
闥亜は満足して言った。
「然り。それでいこう兼秋。」


「ええええええ!!?砂沙美が軍師ぃぃ〜〜〜〜〜!!!??」
その声が聞こえるのは李美の屋敷である。
「ええ、私が皇に奏上しますので、私の変わりに軍師となって欲しいのです。」
そう言うのは船穂。
「砂沙美は・・・文官志望なんですけど・・?」
「この国家多難の時機に、そのような悠長なことも言っていられませぬ。
 砂沙美殿をおいて、瑜免と互角に戦える軍師はおりませぬ。」
砂沙美が軍師の就任を拒否する理由はいくつかある。
まず、殺人の策を考えること。
砂沙美は徹底した平和主義者で、繊細可憐な神経の持ち主である。
人殺しの策など考えれるわけがない。
次にこの大抜擢への不安である。
船穂の国家における権力は大きい。
しかも第一皇妃である。
その人物をおしのけての就任には戸惑いがあって当然である。
他にも魎皇鬼との関係に対する惑いや、責任、重圧など、多くの要素がある。
だから砂沙美は決して承諾しない。
しかし船穂もひかない。
なかなか進展しないこの交渉に嫌気がさしたのか、李美が打開策を出した。
「それではこういたしたらどうです?
 砂沙美どのには参謀府の一員となってもらい、中軍師として船穂様を助けていくというものでは?」
始めは砂沙美はそれでも承知しなかったが、李美と船穂の説得によって、とりあえず中軍師の席に座るのを承諾した。
船穂は狂喜して、
「これは吾ら樹雷の祖たる内海公が、軍師たる瀬戸を得たのと同じようなものです!」
と言った。
李美が続けて
「それでは明日に、皇に奏上いたします。」
と言う。
偶然か必然か・・・。
神我人を打倒するための役者がそろいはじめていた。


天樹城。
船穂と李美は阿主沙と面会していた。
「先日招賢館にすばらしい人物が訪ねてまいりました。
 本人は文官を希望しておられますが、この者、胸に六韜三略を秘め、瀬戸の兵法書を全編そらんじ、まさに大元帥や総軍師たる
 人物にございます。
 皇がこの者を重く用いれば、天下は数年のうちに我が方に定まりましょう。」
と、李美が砂沙美をベタほめして推挙した。
船穂も
「かの人物に、総軍師の職を譲ろうといたしましたが、失敗しました。
 しかし、我々が懸命に口説き落とし、参謀府への加入には同意をいただきました。
 瑜免と互角に争える人物は、かの者をおいて他にはございません。」
と言う。
阿主沙はう〜むとうなりながら問うた。
「それほどの人物ならば、用いぬ手はあるまいが、わしはいまだかつてそのような大賢人が樹雷におるとは聞いておらぬ。
 いったい、その者の名はなんと申すか?」
船穂ははっとしたが、すぐに
「樹雷の生まれの人物のもとに養われている砂沙美と申すものです。」
と答えた。
案の定である。
阿主沙はその名に心当たりがあった。
そして、船穂に言った。
「砂沙美とはならずものに脅されて土下座したという女ではないのか?」
「はい、その砂沙美です。」
「なんと!?二人してなぜわしにそのような臆病者を推挙するか!?」
「皇、我々は砂沙美の才をいろいろと試してみました。
 そこで風説とはまるで違う才人と見たのでございます。
 陛下も風説に惑わされることがないよう・・。」
と、李美も言った。
「しかし、砂沙美といえば家の借金をまかなえずに、借金とりに追われ、高級住宅地の人間のくせに日々労働に勤しんでいるとも
 聞くが?」
船穂が今度は言った。
「陛下、古来より貧しい家の出の名将は多くございます。
 我らが樹雷皇家の創始者内海公の軍師たる瀬戸も、元をただせばいっかいのしじみ売りです。
 貧富を持って人を計ってはなりませぬ。」
こんな調子で話が続いたが、船穂らの熱意に根負けしたのか阿主沙も
「その方らがそこまで言うのならば。」
と言って、参謀府に砂沙美の席を加えることを承認した。
船穂達は、
「これで天下は成りました。」
と喜んで退出していった。

さて翌日。
砂沙美は始めて天樹の門をくぐった。
李美に案内されて、樹雷皇、阿主沙とのご対面である。
阿主沙は問うた。
「砂沙美殿は、船穂曰く『古来の瀬戸などにも劣らぬ謀将』であるそうであるが?」
「それほどの大才は持っておりませぬ。」
「それでは、瀬戸ときみを比べたら?」
「蛇と蛙ほどの差がありましょう。」
「どちらが蛇か?」
「この幼女が、瀬戸と比すほどの力を持ち合わせだとお思いですか?」
阿主沙は破顔一笑して続けた。
「いやいや、その流れるような舌、さらにわしを前にしても動じぬその度胸。
 その年では、いかに瀬戸といえど持ち合わせてはおらんだろう。」
「非才の身にはもったいなきお言葉。」
「さて、砂沙美殿に質問する。
 我が軍は神我人と対峙すること久しい。
 しかし、良将は既に失われ、国土も残るはこの樹雷のみ。
 なにか良計はないか?」
「いかな計を遂行できる兵力も将も十分ではありませぬ。
 ここは説得工作が一番でしょう。
 神我人につく諸国の王を説き伏せて味方につけ、神我人を孤立させることこそ肝要です。」
「しかし、勢力が弱ったわが国に味方する者などおるまい。」
「まずは戦果でしょう。進入する神我人軍を粉砕し、勢いに乗じて10郡ほど攻め取ればよろしい。」
「簡単に言う。」
「この砂沙美に一計ございます。」
自信たっぷりにそう言うと、砂沙美は長々と計の説明を始めた。
ここは軍議室にちかい場所で、部屋には砂沙美以外に船穂、李美、阿主沙しかいなかったのでこんなこともできるのだ。
この計を聞きおわると阿主沙は上機嫌であった。
「砂沙美はまさに当代の瀬戸よ。世に仕えい!」
そのとき、阿主沙の顔は生き生きとしていた。と船穂は思った。
その阿主沙の顔を見るのは、開戦後久しぶりである。
そして砂沙美は中軍師中郎将に任じられ、軍師船穂の片腕として活躍することとなったのである。



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