Navohar

Hilari Bell


 百年くらい先の未来、人類は異星人ヴァエルによる侵攻をうち破った。これにより、宇宙は決して平和なだけなところではないことを身をもって知り、またヴァエルを退治するのに使った生物兵器がもとになった病気GEDがこどもたちの間で猛威をふるうというおまけが残った。人類はドーム都市に暮らし、再び宇宙へと乗り出そうとしている。ついでながら、異星人の侵攻がありいささか人気は衰えたものの《スタートレック》は未だカルト的な人気があるということになっている。

 ヴァエル侵攻前に人類は独自に超光速航法を開発し、一部の変わり者が他の惑星へと植民に乗り出していた。しかし、ヴァエル侵攻により地球との連絡は中断され、どうなっているかわからなくなってしまっていた。そこで失われた植民星の現状を確認すべく、軍人と科学者から編成された捜索隊が派遣される。主人公のアイリーンもそうした捜索隊に属する微生物学者で、かってヴァエルを排除する生物兵器を作り出したメンバーの一人でもあった。このクルーのリーダーは娘をGEDにより失った軍人のウィラード、またアイリーンの甥でGEDにかかり、足が不自由なマークもいた。
 彼女たちが降り立った惑星ナヴォハーの居留地には人々の姿は見あたらなかった。残された記録、最後の日付は二十五年前のものをみると、現住動物に襲撃を受けたり、現住の病原菌による疫病が流行ったりして人口が減っていたことがわかる。もう絶滅してしまったとクルーは考えるが、マークが森の中で少女を目撃し、ついでにあたりはしなかったものの彼女に撃たれるという事件があり、再度調べるてみようということになるが、クルーたちの捜査では誰も出てこない。マークの見間違いかとの推測が拡がるが、植民者の生き残りで創設者の息子を名乗るガスがクルーのところへやってくる。みすぼらしい格好はしているものの、見たところ疫病の痕跡はなく、どうやって治癒したのかを尋ねても言葉を濁すばかり、何かを隠しているのではないかという気配が濃厚だった。
 《スタートレック》が放映されている世界にしては、着陸前に惑星場の状況を把握していないとか、捜索能力が低いとか疑問も感じるが、ますまずのでだしである。

 ガスはアイリーンたちに自分たちの歴史を語り、必要最小限の物資の提供を求める。生き残っているのは二百名程度、みんなで話し合って物事決める小さな村みたいなものだ、こんどその集まりがあるので長居はできないとか情報を得る。アイリーンたちは特別なスーツを常に着用しナヴォハーの環境とは直接ふれあわないようになっているのだが、マークのスーツがたまたま破れてしまい植民者を死に追いやった病気を発病してしまう。打つ手なしと思われるなか、マークがガスの手によって連れ去られてしまう。こどもの頃から可愛がっていたアイリーンはウィラードにねじ込み、連絡を絶やさないという条件のもと単身で捜索に出かける。
 クルーの居場所くらい常に把握できないのかとか、行方不明、それも現地勢力に連れ去られたのが明白なら総力を挙げて捜索しないのかと疑問がさらに膨らんでくるが、気にせず読み進める。

 ガスたちはラクダに似た生き物に乗って移動をしていた。その痕跡をたどれば追いつくはずだということで、アイリーンはホバークラフトで追いかけていく。痕跡はかすかなものであり、また砂漠地帯に行ってしまったため見つけるのには細心の注意を要し、なかなか追いつけない。そんな中、彼女は猫類似の肉食獣に襲われ怪我をする。傷そのものはたいしたことがなくとも、そこからナヴォハーの病原菌に感染した場合には打つ手がない、獣の格闘により通信機能もいかれてしまいウィラードたちとの連絡はつかないし、水もなくなってきたいた。事実発熱を始めたアイリーンのところにやってきたのがラクダに似た生き物である。彼女が「カウ」と名付けたこの生き物に導かれるかのようにして、彼女はオアシスへとたどり着く。本来であれば、その水をそのまま飲んだりするわけにはいかないのだが、熱でぽっおとしている彼女はそのオアシスの中に入っていく。すると熱は収まり、傷口までもが治癒される。持っていた簡易分析キットによりこのオアシスの水の中には特殊な細菌がいることが判明し、アイリーンはアノーマリ1と名付ける。
 さらに「カウ」のあとをついていくと、ガスたち一行と出会う。そこで彼女を迎えたのは病気が治ったばかりか、歩けるようになっていたマークだった。アイリーンはガスからアノーマリ1の作用により、彼らはほとんど年を取らないこと、創設者の息子といっていたが創設者本人であり、他のメンバーもこどもを除けばオリジナル・メンバーであることを告げられる。ただ、この作用は一度飲んだからといって永続的に続くわけではなく、また水の状態で持ち歩くとその効果がなくなってしまうことも聞き出す。この存在を知ってしまったからには、ナヴォハーの今の状態を守るためウィラードのところに帰すわけにはいかない、帰りたければアノーマリ1が携帯しても効果を発揮する方法を発見するのだといわれ、アイリーンはアノーマリ1の効果の分析と保存方法の解明に取り組む。
 この先、アイリーンはガスたち以降と砂漠を移動しながら、アノーマリ1の研究に取り組むのだが、持っているのは簡易分析キットのみなかなかはかどらない。その上ページも結構費やす。結局、アノーマリ1は様々な環境が要因して生み出されるものであること、その環境の作り出しているのは「カウ」たちラクダに似た生き物であり、この生き物は外見と異なりどうやら知性を持っているらしいということがわかってくる。稚拙な器具ではいくらたっても研究が進まない、ずっとここにいても展望は開けないと思ったアイリーンは、信頼関係を結んでいたガスたちを裏切りウィラードのところへと逃げ帰りアノーマリ1のことを告げる。GEDすら直すというアノーマリ1を知ったウィラードは、まずはラクダに似た生き物の徹底解明をすることを決める。そのためには解剖する必要がある。知的生命体を自分の利益のために殺すのでは、地球を侵略したヴァエルと変わらないではないかと反発したアイリーンは、ウィラードに対し反抗する。

 第一長編というということもあり、あまりこなれていないし、構成も変だったりする。アイリーンがガスたち一行と一緒に過ごし、アノーマリ1の謎を解明とする部分が全体の半分以上を占めかつなにもわからないまま終わる。テーマ的にはある知的生命体の利益のために別の知的生命体を利用していいのかというのもあり、悪くはないと思うのだが。


本の一覧へ
はぐれ蝙蝠のホームページへ