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このページは10年も昔に書いたため、削除しようかと思ったのですが、そこそこ評判が良い様なので残してあります。
私の文章にしては、短く書かれているからですかね(^.^)

競泳経験から得た経験を、『泳道楽』にまとめていますので、そちらも参考にしてください。

長すぎるなら、第12章がここのページに近いページです。

2009.12.20
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1.スランプとは何か
 スランプで悩んでいる選手は自分を知らない。スランプとは自分の心が起しているのである。それに気付かないからスランプを脱する事ができないのである。決して練習不足や能力の限界からスランプが起っているのではない。スランプに突入してしまった選手は、能力の限界なのだろうかと悩み不安になる。そしてやたらと練習をする。練習をしすぎて(特に試合前に)、体が疲れたままレースに出てしまう。「調子の良かったころはこうだった」と過去にとらわれ、その過去以上の練習さえつめば勝てると錯覚してしまう。練習やフォームなどは2次的なものでしかない。

2.スランプを乗り越えるには
 スランプを抜けるには、自分を知ることである。自分の体と相談することである。自分の体の声を聞かなければならない。コーチに答えを求めてはいけない。なぜなら、周囲に問題があるのではなく、自分の心の中に問題があるからである。自分の体をじっくり見つめると、今自分は疲れているのか、それともまだまだいけるのかが聞こえてくる。スランプの選手は間違いなく疲れている。疲れているなら休まなければならない。休むというのは現役選手にはとても恐ろしいことであろう。しかし、体を休ませなければ決して100%、スランプを抜ける事はない。休むという不安や恐怖に打ちかって休むにはどうすればよいか?それは、自分の体を良く見つめるのである。そうすると心から疲れていることに気付く。そうすれば休める。また、スランプを抜ける道も開ける。とにかく自分の体と心に目を向けてあげることである。

3. 量から質への転換
 量から質へというと「だらだらたくさん練習するより、量を減らして1本1本を全力で練習する」ということだと勘違いしやすい。とくにスランプに入りやすい選手ほど。質というのは「自分をみつめる」ということである。自分で自分の体、気分をよくみつめて、自分の状態を把握するということである。そうすると結果として練習量が減るのである。陸上400Mで活躍した高野選手も言っていたが、量には限界がある。その時、なにが出来るかである。あるいは今まで何をしてこなかったのかということである。練習に、専門外を入れてみるとか全然関係ないスポーツをするとかの工夫をするのである。徹底的に。たとえばスキーに行くなどでもよい。スキーに行ったら、自分の専門種目のことは忘れて徹底的に遊び尽くすのである。とにかくいろいろなんでもやることで必ず道は開ける。突然、今までと違う事をはじめるというのは怖いことであろうが、どうせ今までと同じことをやっていてもジリヒンで落ち目になるだけである。やるだけのことをやって失敗するほうが断然いい(実際にはやるだけのことをやれば失敗はしないのだが)。 スランプを抜けるということは、スポーツを、人生を楽しむということなのである。苦しいスポーツがスランプなのである。

4.どのようにして自分のスランプの原因に気付いたか
 私はスランプを抜ける事なく高校生活の終了とともに現役を退いた。大学になりスイミングスクールでアルバイトをしながら、年に2回ほど大会に出た。その時の練習は、試合前に4週間100M×20本、試合直前2週間を1000M位軽く泳ぐ程度という練習であった。試合前以外の時期はまったく練習はしていない。大学生らしく遊びほうけていた。現役時代は1年中フルに泳ぎ、強化期間には1万5千メートルも泳ぎ込んでいたにもかかわらず、この現役時代のベストと同タイムくらいで泳いだ。50M以下にいたってはベストすら更新してしまった。この経験で初めて高校時代の自分が、練習をしすぎて疲れ、試合前2週間の調整期間に練習を落とす勇気がなく、結局疲れたままレースに出場していたのがわかった。後半に強く長距離の得意だった自分が、スランプになってからは、後半が異常に弱く、長距離が苦手になった理由が分かった。後半が弱くなったのではなく、レースをする前からすでに疲れているので、後半まで持たなかったのである。持たないどころか、後半が弱くなったと思っているだけに前半に賭けてしまう。結果、オーバーペースで更に後半が落ちてしまう。簡単にいえば自分の状態を把握せずにやったために、試合にピークをあわせられなかったのである。こうして競泳から一歩引いて冷静に競泳、自分、体を見つめたことで、スランプの原因がわかったのである。

5.以上の理論を証明するもの
 世の中にはスランプを知らずに上り調子で選手生活を終る幸せな人もいる。いわゆる名選手と呼ばれる人達には多いと思われる。名選手が名コーチになれないのは、スランプを経験したことがないので、教え子がスランプになっても理解してあげられないからである。名選手というのは、無意識に自分をコントロールできるのであろう。疲れれば周囲を気にすることなく休み、気が向くと猛烈に練習をしたりする。しかし、平凡な選手はそうはいかない。自分で意識して自分をコントロールしなければならない。スピードスケートの清水選手を取材した番組を見た。彼はコーチがいないそうである。自分を自分で管理し、完全に自分をコントロールしている。彼は名選手ではない。自己をコントロールし、自分を世界1へと導いたのである。彼はレース直前に体が疲れているといって2日も練習を休んでいた。その時のレースは2位ではあったが、世界新であった。世界大会で練習を休む勇気はまさしく、自分の体の声が聞こえている人のできる技である。陸上の100Mで10秒フラットを出した伊藤選手の出た番組を見た。彼もまた、自分を完全にコントロールしていた。彼もまた、大学時代には記録がまったく伸びずスランプを経験していた。マッサージは嫌いだそうだ。自分の体は自分でめんどうを見るといっていた。大学時代に他人任せの練習で体を壊していた経験からこの発想が産まれたと言っていた。練習方法も独自のものであり、走法も競歩を元にした独自のものだそうだ。2人に共通するものはコーチをつけず、自分自信の独自の世界でやっていることである。清水選手も言っていたが、レースは自己との戦いである。

6.スランプを避ける方法
 スランプを経験しない選手とスランプを経験しそれを脱した選手では、スランプを経験した選手の方が断然強い。特にオリンピックにおいては。とは言っても、スランプなど経験しなくていいものならしたくないものである。そこで、スランプにまだ入っていない人への忠告である。

「テレビで「オリンピックで金を取ります」と言ってはいけない」
 これはもちろんオリンピック選手によくある発言だが、一般選手なら、本当の目標は内に秘め、周りに公言しないということである。試合では練習の苦しさ、興奮、あふれそうな自信や力、あらゆるエネルギーを一瞬のうちに爆発させなければ絶対に勝てない。自己の内側にグーッと秘める物がなければならない。強くなって試合のレベルが上がれば上がるほどスキは許されなくなる。テレビなど出てチャラチャラしていると、この爆発させるエネルギーが減ってしまう。テレビで「金を取ります、がんばります」と言った時点で本人の心のレースは終ってしまっている。そう言ってしまう事で気持ちが落ち着いてしまい、また「言ったからには実行しなければならない」という余計なプレッシャーを自分でかけてしまっているわけだ。試合でがんばらないでいいと思ってもがんばってしまうのが普通であり、試合の時には力まないように心がけ、自分らしい試合をしなければならない。なのに回りに余計な公言をしたがために冷静さをかいてしまい、それによってスキが出来たりする。有名どころでは柔道のヤワラちゃん、フィギアスケートの伊藤みどり、などみなそうである。オリンピック前にテレビによく出る奴は必ず負ける。テレビにはオリンピックの後にいくらでも出ればよいのである。鈴木大地も岩崎恭子ちゃんもみんなマスコミの目に触れにくい人物が金を取る。オリンピック前、この点を注意して見ていると誰が金が取れないか9割くらいの確率でわかる。勝負はレースの前から始まっているのである。一部、ちゃらちゃらしていても勝てる人物がいるがそれは超大物である。アマチュアスポーツはショーではないのだ。プロ野球やJリーグのように負けた時の涙を売りにするような感覚では、アマチュアスポーツでは通用しない。お金がからまない分、負けた時のショックは本人で抱え込まなければならない。ついテレビに出たい時にはその辛さを理解して、レースが終るまで報道陣は避けるべきである。この究極をいくのが、スピードスケートの清水選手であると思う。

2000年訂正追加文
 1年前に書いたとき、この部分に女子競泳陣はオリンピックでずっこけると書いていたが、2000年4月の日本選手権を見に行ってそれを訂正します。タイムがすごいというのもなきにしもあらずですが、それよりも、代表選手の年齢層が高くなったこともあり、精神的成熟度が高いように感じためです。
 レース後の女子選手には若干の浮つきが見られたが、それでもかなり先を見すえた感じがした。女子のブレスト、バックではそれなりの結果を残せるのではと感じさせるものがあった。男子のブレストの林選手にはほぼ完璧な成熟ぶりであった。100Mで勢いで押した北島選手に負けはしたものの200Mの貫禄のあるレース運び。しかもあれほどのベテラン選手でありながら、インタビューでも放送されたことだが足の甲に「レースを楽しむ」と自分で書いていた。この心境である。本来、世界を何度も経験した林選手ほどになればいくら代表選考会とはいえ、日本選手権ごときで自分を見失うようなことはないと思っていたが、そうではないようだ。「日本選手権ごとき」と甘くみない、レースを知り尽くしたすばらしい選手だ。インタビューの一言一言に重みがあり、当然浮ついた部分もなく、尊敬してしまった。おそらく一時水泳から遠ざかったことでここまで大きく成長できたのであろう。北島選手はフォームもまったく去年とは変わりおそろしく成長していたが、世界経験がないので当然なのだが精神的に未熟さが感じられた。泳ぎの張りという意味では北島選手の方がいい動きをしてはいるが、オリンピックでは精神的にだんぜん上を行っている林選手のほうが良い結果を残せるのではないだろうか。

7.スランプ脱出練習法
 強化練習中に調子が悪い分けではないのに、試合で結果が出せないというのがスランプである。レースで結果が出ない。すると練習量を増やす。本来十分な練習量以上の練習をする。疲れが異常なほどたまる。しかし、その疲れを調子が悪いと感じてしまう。調子が悪いので不安になりさらに練習してしまう。そして試合の直前まで練習中ある程度のタイムが出るまで練習してしまう。疲れがたまったままレースに挑む。こういう悪循環がスランプを産むのである。自分の体、筋肉と会話をしなければならない。調子が悪いのは体が疲れているからである。疲れを取らなければ張りのあるレースが出来ない。練習は常に体と会話をして決めなければならないが、調整には2週間は必要である。試合前1週間には最低1日、完全休養日を入れなければならない。ダッシュ練習もあまりやってはいけない。試合前ダッシュは練習量が落ちていてつい全開でやってしまう。疲れも残るし、レース前に気持ちが爆発してしまい、試合まで気持ちが持たない。試合前にはどんなことをやってももう無駄だと開き直る大きな器が必要である。私も現役当時はおそろしくて練習を休めなかった。しかし、インターハイの後のJOでベストが出たとか、オリンピック選手が日本選手権などで日本記録を出し「風邪をひいてここ1週間まったく水に入っていなかったので自分でも信じられません」と言っているのを何度か聞いた。つまり、試合前1週間はまったく水から離れてもいいくらいなのである。勇気を出して休もう。
 また、長いスランプ期には一時引退するのも手である。長い選手生活で、練習が嫌々になっていては勝てない。ちなみに私は今、きつい練習も楽しい(まあ現役のころのように1万メートル泳ぐようなことはないが)。現役時代には練習が、きついことが楽しいなんて想像出来なかった。苦しいけど楽しい。この境地に達するのはいったん引退するのが一番の近道である。名選手が引退してカンバックしてくるのはきっとこの楽しさを知ったからであろう。現在の私のベストな体の作り方は以下8週間である。常に体と相談して練習を変更することが大切なのであくまでも参考までに。

強化練習期間
(6週間)

3週間の強化期間
練習中のタイムが落ちて来るのでここで1週間練習量を落とす
2週間の強化期間

調整期間
(2週間)

1週間がくんと練習量を落とす
1日又は2日休む
試合前4日間のダッシュは1日3本まで

試合当日

当日のアップのしすぎに注意。特にダッシュ練習

次の試合のための準備期間

次の試合に向けての気分が高まるまで練習をしない。やる気のない練習は意味がないどころかマイナスである。ここが一番大切な期間であることを忘れてはならない。徹底して休むことは重要な練習である。




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