RED


BY ゆうきゆうき


 コンコンッ。ドアのノックの音にジャッキーはTVを見ていた視線をドアに向けた。
「誰だ?」
 ドアの前に立って尋ねる。ドアホールを覗くなんて面倒なことは彼の性に合わない。
「俺です」
 笑いを含んだ声でわざと名乗らず答えたのはリオン。
「リオンか…どうした?」
 ジャッキーはドアを開いてリオンを見た。
「ジャッキー、ワインでも飲みませんか?」
 そう言ってリオンは後ろ手に持っていたワインをジャッキーの目の前に差し出した。
「ワイン?ガキがそんなもん飲んで良いのか?」
「フランスでは水代わりです。バカにしないで下さい」
 気の強い子猫の反逆にジャッキーは笑い、親指で部屋の中をさす。
「入りな。そのかわりつぶれても介抱なんかしてやらないからな」
「つぶれたりしませんよ。俺、強いですから」
 リオンは不敵に笑って部屋に踏み込んだ。

 リオンの持ってきたワインはボルドーの最高級の赤ワイン。コルクを器用に抜いたジャッキーはその素晴らしい香りに目を細める。
「さすが…最高級のガキは最高級のものを知ってるんだな」
「全くもう。ガキ扱いはやめてください」
 そう言って唇を尖らせる仕草がひどく子供っぽく見えていることにリオンは気付いていない。
「ま、大人ぶりたい年頃だからな」
 軽くウィンクをして、ジャッキーは二つのグラスにワインをついだ。
「じゃ、乾杯と行こうか」
 特上の硝子を使ったグラスはチンと綺麗な音をたて、二人はワインに口をつけた。

 リオンは確かに自分で言ったように酒には強いようだった。二人でワインを1本開けた後、ホテルの部屋の中にあったウィスキーなどを飲み始め、かなりの量を飲んだのだが口調はしっかりしたままだ。
「だけど…お前真っ赤だなぁ」
 ジャッキーは愉快そうに笑ってリオンの髪をくしゃくしゃと撫でた。
「顔に出る方なんですよ。いつもこれで弱く見られる」
 比較的白い肌を真っ赤に染めたリオンは軽くジャッキーをにらみつける。
「そんな赤い顔で睨んでも怖くねーぞ」
 そう言って笑うジャッキーはわずかに頬を赤く染めている程度だ。彼もかなり強いらしい。
「こうなったらとことん飲み比べましょうか?」
 リオンのその提案にジャッキーがのらない筈がない。彼は負けず嫌いなのだから。
「よーし。泣いても許してやらねーぞ」
「泣きませんって」
 リオンとジャッキーは再び乾杯し、勝負をはじめたのだった。

「ジャッキー、気分はどうです?」
 ジャッキーが目を覚ましたのは翌日。頭が酷く痛む。二日酔いか。
「う…頭痛ぇ」
「それはそれは」
 一方リオンは平気な顔をしている。
「お前、大丈夫なのかよ」
「全然問題ありません」
 平然とリオンが言うとさすがのジャッキーも勝ちを諦めたようだ。
「ちぇっ。俺の負けか。夕べの時点では互角だったんだけど、後が悪かったぜ」
「それじゃ、約束通り一つお願いを聞いていただけますか?」
「そんな約束したっけなぁ・・・」
 頭を抱えてジャッキーが呻く。
「で?なんだ?お願いって」
「あなたの車に乗せて下さい」
 リオンは無邪気に微笑んでそう言った。
「俺の車?」
「ええ。あの真っ赤なフェラーリに。インディーレーサーの運転するフェラーリに乗る機会なんて滅多にありませんから」
 年相応の少年らしい笑みを浮かべるリオンを見てジャッキーの気分も少し軽くなる。
「了解。ただし…この二日酔いがおさまってからな」
「当然です。俺だって命は惜しいですから」  クスリと笑ってリオンはジャッキーにミネラルウォーターのビンを差し出した。
 その日、天候は素晴らしい快晴。恐らく二人のドライブは最高のものになったであろう。

【FIN】

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