副作用

〜狂おしい衝動は何を生むか〜


BY 如月星羅


「はあっ…」
 苦しい・・・。燃える炎が僕の体の中を駆け巡り、僕の唇からは熱い息が漏れる。部屋中を燃やし尽くすような熱い息だ。
「水が飲みたい…」
 僕は小さな声で呟いた。でも、真夜中の病室には僕の言葉を聞いてくれる人はいない。
「水が欲しい…」
 理由は分かっている。あの薬のせいだ。僕の病気の進行を食い止めるというあの薬・・・。あの薬を飲むと決まって水が欲しくなる。喉が渇くなんて生易しいものじゃない。体中が水を欲するんだ。水を飲んだとしてもその渇きは癒されない。薬の持続時間中ずっと続くんだ。苦しい。
「水が欲しい」
 体中を焼く炎。苦しさのあまり、僕の頬を伝う涙さえも玉露に見える。水が欲しい。あの薬のせいでこんなに苦しいのなら、死んでもいいからあの薬を飲むのを止めようとさえ思う。あの薬を飲んだって一時的に病気を食い止めるだけ…僕はもう助からないんだ。自暴自棄の気持ちが僕を狂わせる。
「雨…?」
 窓の外で激しい雨と風の音がする。そう言えば、台風が来るとか言ってたっけ…。
「台風か…」
 風が病室の窓に雨を叩き付ける。ああ…水が欲しい。僕はゆっくりとベッドから起き上がった。吹き荒れる雨と風に誘われて僕は窓に近付く。大粒の雨が白いカーテンのように密集し、風に煽られている。
「あの水が欲しい」
 僕は窓を開け、嵐のシャワーを浴びた・・・。

 翌朝、台風一過の晴れやかな陽射しに照らされた病室のベランダで、少年は発見された。重い病に冒され、長期の入院生活で弱った少年の体は、嵐の猛攻に絶えられず、その心臓は永久に動きを止めていた。
「彼には、もう、ベッドから起き上がる体力さえも残っていなかったはずなのですが…」
 安らかな少年の死顔を見ながら医者が言う。彼等には、少年の心は理解出来まい…。
 狂おしいまでに水を求めたその少年の名を瑞羽(みずは)と言う・・・。

【FIN】

1990.9.20 finished
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