Magic


BY 如月星羅


 君はMagic Kingdomという王国を知っているかい?
 Magic Kingdomは、とても不思議な王国だ。この国の人々は、誰でも必ず一つだけ魔法を使うことができるんだ。王国の街を歩けば、空を飛ぶ魔法を使える人達が空を飛んでる様子がすぐに見れる筈。火をおこす魔法、水を集める魔法。ミルクを美味しいチーズに変える魔法。人々はそれぞれに一つだけ与えられた魔法の力を有効に使って生きているのだ。
 そして、この国の中で一番強大な魔法を使えるのは、勿論、Magic Kingdomの王様だ。Magic Kingdomの代々の王が使える唯一の魔法とは天候を自在に操る力。他の国民とはスケールの違うその魔法の力を、代々の王は国民の為に使い、尊敬され、慕われていた。
 そんな王様の中の一人、MAGIC 17世には、とてもとても美しい、LOVEという名の一人娘がいた。彼はたった一人の子供であるLOVE姫を目の中に入れても痛くない程可愛がっていたんだよ。
 ところで、Magic Kingdomの王女は、18才の誕生日に結婚相手を決める習わしになっている。LOVE姫の婚約者も当然姫の18才の誕生日に決められることになっていた。
 さっき言ったけれど、LOVE姫は一人っ子だったよね。当然、Magic Kingdom の王位は彼女が継ぐことになる。実は、Magic Kingdomの王は、王家の強大な魔力を絶やさない為に、強大な魔力を持つ者と結婚しなければならないのだ!

 実はLOVE姫には愛する人がいた。それは、BLUEという名の騎士だ。BLUEとLOVE姫は、心から愛し合っていた。
 けれど、何故かBLUEは、誰もが一つ使えるはずの魔法が使えないのだ。たとえば本のページを触らないでめくるというような、どんなに簡単な魔法さえも使えないのだ。そのことを考えるとLOVE姫とBLUEの結婚は絶望的に思われた。
 さて、美しいLOVE姫へ求婚する相手は、星の数程いたんだよ。その中から、王家の姫の結婚相手に相応しい強大な魔力を持つ者を選ぶ為の審査方法が、ある日王から発表された。
「我が愛しき娘LOVEの為に、空に見事な虹を描いた者をLOVEの夫とする」
 王の発表で求婚者の大半はLOVE姫との結婚を諦めた。それ程、王の出した条件は困難なことだったのだ。天候を自由に操る王のような強大な魔力が無ければ、空に虹を描くことは不可能なのだ。
 こうして、求婚者はたったの5人になった。LOVE姫の18才の誕生日に、5人の求婚者は空に虹を描くことになった。

 その日の空は、MAGIC 17世の操る魔法によって、雲一つ無く晴れ渡っていた。5人の男とMAGIC 17世、そしてLOVE姫は国民が見守る審査の会場…海岸に姿を現した。
 最初の男は、魔法を使い空に七色の長い布を漂わせ、虹を模した。布は風にあおられ絡まってしまいとても虹には見えなかった。
 2番目の男は、海の水を吹き上げ、その飛沫で小さな虹を描いた。それはあまりに一瞬すぎ、あまりに小さかったため見守る国民のほとんどはその虹を見ることができなかった。
 3人目は、七色の宝石を砕き、霧のように風に漂わせ、偽りの虹を作り出した。宝石を砕くだけのその男の魔法の力ではそうして虹を描くのが精一杯だった。
 3人の求婚者の描いた虹はが、どれもMAGIC 17世の気に入るものではなかった。
 4人目は隣国の王子だった。Magic Kingdomの者ではない彼は魔法を使うことができない。そこで王子は前もって海岸に大きな櫓を組み、兵隊を引き連れて来ていた。王子の命令で、兵士達は櫓の上からじょうろで一斉に水を撒く。彼等の作り出す人工の雨は、確かに虹を描き出した。しかし、勿論、これもMAGIC 17世には認められなかったし、国民も納得しなかった。
 そして最後に残った5人目こそがBLUEだった。虹を描くなんて無理だと諦めようとした彼だったが、LOVE姫に励まされ、審査に挑戦することになったのだ。
 策を弄した挑戦者は次々に失敗している。彼は正々堂々と、空に虹を描く魔法を試み、失敗したならLOVE姫との結婚はきっぱり諦めようと考えていた。
 BLUEが何夜も徹夜して魔法書を研究し覚えた呪文を唱え始める。LOVE姫には祈りを込めて見守ることしかできなかった。王家に生まれ、強大な魔力を持つLOVE姫は、魔法で空に虹を描くことだって簡単にできる。しかし、そんなことをしてもBLUEは喜ばないだろうし、そんな手助けは、すぐにMAGIC 17世に見破られてしまうだろう。
………神様お願いです。BLUEの魔法を成功させて。どうかあの空に綺麗な虹を………
 それは、まるで奇跡のようだった。簡単な魔法さえも使えないBLUEが唱えた呪文によって、雲一つ無い青い空から大粒の雨が落ちてきたのだ。
 LOVE姫は息を飲む。大粒の雨はやがて細かい霧雨になり、大空に美しい虹を描き出す。それは、見事な、とても見事な虹だった。
「BLUE。お前は不思議な男だ。お前は簡単な魔法さえ使うことができない。それなのに、この様に見事な虹を描き出す。しかも、この虹は、王族の使う天候を操る魔法によって描かれたものではないのだからな」
 LOVE姫の目には、BLUEの使った魔法が、自分やMAGIC 17世が使う、天候を操る魔法であるように見えた。しかし、MAGIC 17世はそうではないと言う。
「BLUEの力は特別なものだ。BLUEは、自分では簡単な魔法さえ使えないが、そのかわり、愛する者の願いをかなえる力を持っているようだ。それは驚く程強い力だった。LOVE、お前はBLUEが虹を描くことを願ったのだろう。BLUEはそれに応えて空に見事な虹を描き出したのだ。BLUE、確かにお前はわしの出した条件を満たしたな。お前はLOVEに相応しい男。LOVEを頼むぞ」
 MAGIC 17世は満足そうに頷くとBLUEの手を取った。BLUEは微かに目を潤ませながら静かに頭を下げる。その様子を見ていた国民達は歓喜の声をあげ、喜んだ。
「MAGIC 17世陛下、ありがとうございます。このBLUEの持つ全ての力を尽くして、LOVE姫を必ず幸せにいたします」

 こうして、BLUEとLOVE姫は結ばれて、幸せな生活を送ったんだ。二人の間には、のちのMAGIC 18世になる可愛い王子も生まれて、Magic Kingdom は益々栄えたのさ。
 分かるかい?愛は魔法を生み出す力になるんだよ。
 心から人を愛してごらん。きっと分かるさ。
 それは、君も持っている力だから………。

【FIN】

1992.10.2 finished
1995.1.18 remake!

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