SECRET RHYTHM


BY 如月星羅


 僕の住んでいる町の外れには大きな森がある。昼でも暗いその森を大人達は魔物が住む森だと言って、そこで僕達が遊ばないように脅していた。でも、僕達…子供達にとって、そこは楽しい遊び場だった。
「ねえ、ママ。ママには聞こえないの?森の奥から何か音がするよ」
「何言ってるの、ルイス。馬鹿な子ね。ただの空耳よ。そうじゃなかったら森の魔物が生贄を求めている声だわ。絶対あの森に近付いては駄目よ」
 パパもそんな音は聞こえないと言う。大人には聞こえない音。絶対に空耳や魔物の声じゃない。あれは森の奥にいる誰かが僕達を呼んでいる音。だってほら。誘うようなリズムで音は鳴り続けている。魔物の声じゃない。魔物がこんな素敵なリズムを奏でられるはずない。僕達を呼んでる誰かを森の中に捜しに行かなくっちゃ。一緒に行こうと誘ったら、隣のアリスがこう言った。
「ルイス、本当に行くの?森の中に魔物がいたらどうするの?」
「アリス、魔物なんていないよ。大人が僕達を怖がらせようとして言ってるだけさ。それに、もし魔物がいたとしても、僕がアリスを守ってあげるよ」
 胸を張ってそう言うと、アリスもコクリと頷いた。
「お菓子を持って…水筒にはジュース。懐中電灯も忘れちゃいけない」
 ママに見付からないように準備して、僕はアリスと一緒に森の中に入った。
「アリス、音はあっちから聞こえるよね」
「うん。でもルイス、本当に大丈夫?」
 アリスはとっても怖がりだ。でも、金髪とブルーの瞳がとてもキュートなので、僕はアリスのことが大好きなんだ。
「アリス、怖いなら手をつないで行こうよ」
 手をつなぎ、暗い地面を懐中電灯で照らし、僕達は音の方へと近付いて行く。
「すごい音。でも、ロックのリズムみたいで素敵ね、ルイス」
「うん。いいよね、このリズム。これを聞いてたらアリスも怖くないだろ?」
 森の奥へと歩いていくとピカピカ光る大きな機械があって、音を出していた。
「これが…あの音の元なの?ルイス、誰もいないわ」
「よく見ろよ、アリス。中で誰かが眠っているよ」
 その機械の中で誰かが眠っていた。とても綺麗な人だった。
「ねえ、起きてよ。僕達を呼んだでしょ。ねえ、起きて」
 アリスと二人で大きな声で呼ぶとその人はパッチリと目を開けた。
「やあ、君達が私を起こしてくれたんだね」
 機械の蓋がパカッと開いて、中からその人が出てくる。
「そうだよ。僕達をあの音で呼んだでしょ」
「呼んだよ。私の名前はガルボア。ずっとここで眠っていたよ」
 ガルボアは声もとても綺麗だった。
「どうして僕達を呼んだの?どうして眠っていたの?」
「私はね、遠い星から来た作曲家なんだ。宇宙船のエネルギーが無くなってしまったのでこの星から帰れなくなった」
「それじゃ、ガルボアは宇宙人なの?」
 アリスが大きな目を真ん丸にして尋ねる。
「そうだ。私の宇宙船は、私の音楽を好きだと思ってくれる人の気持ちをエネルギーにして飛ぶんだよ。だから、宇宙船からリズムを流し続けて、私の作ったリズムを聞いてここに来てくれる人を、眠りながら待っていた」
 ガルボアは僕とアリスを見て、にっこりと笑った。
「君達はこのリズムが好きかい?」
「うん、大好き」
 僕とアリスが答えるとガルボアは満足そうに微笑んだ。
「私のリズムは秘密のリズムなんだ。本当に好きだと思ってくれる人にしか聞こえない不思議なリズムだよ。ありがとう君達のお陰で星に帰れるよ」
 そう言うとガルボアはまた機械…宇宙船の中に乗り込んだ。
「ありがとう。さよなら」
 僕達の『好き』をエネルギーにして、周り中に素敵なリズムを響かせながらガルボアの宇宙船は空高く飛んで行ってしまった。信じられないかもしれないけど、これは僕達が出会った本当の話さ。僕もアリスも夢だったなんて思っていないよ。だって、僕達は今でもあの素敵なリズムを覚えてる。
 ………耳を澄ませてごらん。どこからか素敵なリズムが聞こえたら、それはガルボアが君を呼んでいる音だよ。秘密の暗号SECRET RHYTHMが聞こえたら、君もきっとガルボアに会えるはず………。

【FIN】

1991.8.30 finished
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